季節の見どころ

西ノ島を含む隠岐諸島は様々な時代を経て、約1万年前に離島になりました。隠岐と本土の海底は深いところでも水深80mしかありません。1万年前の最終氷期の時代には今よりも海面が100m低かったため、隠岐は半島のような形で本土とつながっていたと考えられています。 このような大地の変化は隠岐の生態系にも影響を与え、隠岐では「不思議な分布をする動植物」が多く見られます。たとえば植物は北方系、南方系のものが同じ場所で見られたり、大陸系、高山系、氷河期の生き残りの植物が共存していたりします。これらの成因はまだ解明されていません。また、日本海を越える渡り鳥の中継地として、春と秋には多くの種類の鳥が観察されます。2015年には日本ではほぼ繁殖の記録がないミヤマホオジロの繁殖が確認されました。 植物や野鳥はハイキングコース周辺でもよく見られ、ハイキングの楽しさを倍増させてくれます。 このページでは、独特の生態系を持つ西ノ島の自然の見どころを四季に分けて掲載しています。ぜひハイキングの際の参考にしてください。

もっと知りたい方はこちらへ!⇒隠岐ユネスコ世界ジオパーク(外部サイト)

一気に咲く草花と夏鳥のコーラス(3月〜5月)

多種多様の桜

多種多様の桜

西ノ島の桜は本土より少し遅れて咲きます。由良比女神社や町の中で見かけるソメイヨシノのほか、山々を彩るヤマザクラなど自生の桜も見られます。特に由良比女神社の裏山を覆うヤマザクラは見事です。

オキタンポポやユキグニミツバツツジが見ごろ

オキタンポポやユキグニミツバツツジが見ごろ

隠岐固有の植物であるオキタンポポは国賀海岸で広く見られるようになります。国賀海岸で見られるタンポポにはセイヨウタンポポも見られますが、ほとんどがオキタンポポです。また、焼火山に行く北方系植物のユキグニミツバツツジの鮮やかな朱色の花が緑の森林に目立ちます。

オオルリ、キビタキ、森を彩る夏鳥のさえずり

オオルリ、キビタキ、森を彩る夏鳥のさえずり

4月中旬頃には繁殖するために渡来した渡り鳥の姿が目立つようになります。中でも代表格はオオルリとキビタキ。姿の美しい2種ですが、そのさえずりも美しく、特に早朝の森中に響き渡る彼らのコーラスは一聴の価値ありです。

昆虫や星空の季節(6月〜8月)

飛び交う蝶たち

飛び交う蝶たち

盛夏に近づく7月、国賀海岸はハマウドの花が満開になります。この花には受粉を担う蝶やハナムグリの仲間が多く集まります。この時期はキアゲハやヒョウモンチョウの仲間など、草原性の蝶を中心に多くの蝶が見られます。

ハマゴウやヒオウギの咲く季節

ハマゴウやヒオウギの咲く季節

夏の花として目立つのはハマゴウやヒオウギです。ハマゴウは国賀海岸のハイキングコース中に大きな群落がみられるほか、海外沿いでは西ノ島のどこでも見られます。葉にハッカのような芳香もあるので、ぜひ嗅いでみましょう。ヒオウギは見事な橙色の花を咲かせます。赤尾展望所付近で見られます。

満天の星空と漁火

満天の星空と漁火

西ノ島では町の中でも少し光を遮った場所に行くと、年間を通して美しい星空が見られます。特におすすめなのは夏の星空。夏は全天に広がる天の川で一番明るい部分(中心部)が南の空に見られるため、肉眼でも天の川の存在を確認できます。また、外洋には無数の漁火が浮かび、星空との美しい共演が楽しめます。

隠岐を特徴づける花と渡り鳥(9月〜11月)

センニンソウの大群落

センニンソウの大群落

9月初めころになると、国賀海岸の牧草地はセンニンソウの白い花に覆われます。センニンソウは日本各地にありますが、国賀海岸ほどの大群落は珍しいとされています。毒を含むため牛馬に食べられないことが、センニンソウにとって最適な環境を生み出していると考えられています。

トウテイラン、ダルマギクなど隠岐を代表する花たちの季節

トウテイラン、ダルマギクなど隠岐を代表する花たちの季節

世界でも西日本の日本海沿岸でしか見られず、さらに隠岐が分布の中心となっている植物がトウテイランです。また、ダルマギクは氷河期時代の生き残りで、これも西日本や朝鮮半島の日本海側でしか見られない珍しい植物です。秋の国賀海岸ではトウテイランとダルマギクが群生する光景が見られます。

タカの渡り

小鳥やタカの渡り

日本海に浮かぶ西ノ島は渡り鳥の中継地。特に秋は越冬地に向かう小鳥やそれを狙うタカの仲間が多く出現します。10月頃に赤尾展望所など見晴らしの良い場所では、次から次へと小鳥の群れやタカが現れます。

紅葉の季節

紅葉の季節(紅葉の見ごろ10月中旬~11月中旬)

北方系の落葉樹であるイタヤカエデやコハウチワカエデが混在する西ノ島では、意外にも紅葉を楽しめます。さすがに有名な紅葉の景勝地と比べると規模は小さいですが、10月下旬から11月にかけて焼火山の山道は赤や黄色の葉でささやかに彩られ、旅人の目を癒してくれます。

季節の見ごろカレンダー

見どころ 見ごろ
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
ユキグニミツバツツジ
焼火山の新緑
小鳥の渡り
春の花のピーク
オオルリ、キビタキなど夏鳥のさえずり
蝶のピーク
ヒメボタル
天の川
センニンソウ
トウテイラン
ダルマギク
オキノアブラギク
タカの渡り
紅葉

動植物を観察してみよう!

花を観察してみよう!

クルマバソウ

ハイキングコースには季節を通じてたくさんの種類の花が咲きます。目立つように大きく、まとまって咲いている花もありますが、ほとんどの花は牧草地や林床にひっそりと咲いています。事前にどんな花がいつどこに咲いているのか調べ、心に留めておくだけでもずい分発見できるようになります。フィールドノートを参考に、季節と場所ごとに咲いている花を前もってチェックしておきましょう。草原の草花は他の植物の葉などに隠れていることもあるので、花があると思いながら草の陰や岩棚、道脇などに視線を移すことも大事です。西ノ島には同じ色をした花の種類も多くあります。色だけみて花の種類を決めつけず、花の形や花びらの枚数、花や葉の付き方なども観察してみましょう。種類によってずい分違うことに気づくと思います。

野鳥を観察してみよう!

ヤツガシラ

野鳥は空を飛んで移動し、警戒心も持ち合わせているため、花よりも観察が難しくなります。そんな時の頼りは声です。特に春から初夏にかけて鳥たちは子育てのためのラブソング(以下、さえずり)を歌います。そのさえずりは種類ごとに決まった音調のものが多いのです。例えばウグイスは「ホーホケキョ」、ホトトギスは「トッキョキョカキョク」などです。 今ではインターネットで多くの鳥のさえずりを聞くことができます。事前にフィールドノートで季節と場所の鳥を調べ、さえずりを確認しておきましょう。また、西ノ島町観光協会では小型の双眼鏡をレンタルすることができます。双眼鏡があれば鳥との距離がグッと近づくのでハイキングのお供におススメアイテムです。

星空を観察してみよう!

天の川と漁火

夜にハイキングをする方は少ないと思いますが、夕食が終わった後、宿の近くを散策してみましょう。西ノ島は離島のため、集落の中でも少し暗い場所に移動すれば素晴らしい星空に出会うことができます。おススメは夏の天の川や、秋から冬のオリオン座をとりまく一等星たちです。薄い曇が空を覆っている場合でも、雲は時間を追うごとに移動しますので、少し時間を置いて夜空を眺めてみると良いかもしれません。双眼鏡があればさらに暗い星々や星雲、銀河など多くの星たちが観察できます。西ノ島町観光協会で小型の双眼鏡をレンタルしていますので、ぜひご活用ください。